呉服 趣味のきもの竹うち

染め生地

戦前日本の重要な輸出品であった絹は、いかに量産するかに主眼がおかれ、いろいろな品種を掛け合わせて、
病気に強く、大きく、糸が太く、繭量が多い蚕に改良されてきました。
この経済偏重の傾向は、着心地や品質の軽視につながり、いくら品質が良くても
繭糸量が少ない蚕は商業養蚕から姿を消していきました。
しかし近年、外国産生糸との差別化・高付加価値化を図る目的からも、国産繭や細繊度蚕品種繭など、
繊度ムラや節が少ない、しなやかで染め付きが良い等、品質重視のブランドシルクに人気が集まっています。

重い生地

昔は絹が高かったので生地のうすい商品も作られていました。その反動として、
重ければ良い生地だとお考えの方も多くいらっしゃいます。
しかし、現在は絹が昔のように高くはないので(外国から安い絹が沢山輸入されているので)、
よほどの粗悪品でない限りペラペラの生地を使うことはありません。
逆に、必要以上に重さを強調する傾向があります。
しかし、重い生地とは、糸が太いと言うことで品質が良いと言うことではありません。

それでは実際着るものとしての良い生地とはなんでしょう。
一般的には、適度な糸の太さ、弾力、光沢があり、染料を適度に含む生地というとこでしょうか。
着る側からいえば、着やすい、シワになりにくい(または、シワになっても回復しやすい)、着崩れしにくい、着姿がよく見える。
加工する側からいえば、染料を適度に含み、染め難がでにくい糸質の良いもの。
着る側、加工する側、両方にとって良いところで折り合いが付いた生地が良い生地といわれます。

生地の見分け方

私共も生地を触って、弾力や光沢、しなやかさは判断できても、触っただけでその生地の本来の性質が判るわけではありません。
着用なさったお客様のご意見を伺ったり、機会があれば染織に携わっている方から教えを請うたりして勉強します。
あとは国内で織られた生地か、国内のブランド生地か、ブランド糸を使ったものかなどを判断の目安にします。

生地の反端には産地(丹後、濱)、「日本の絹」マーク製織業者名(河藤、伊と幸、大塚など)、
製品ブランド名(絹鳴り光彩、まるまんなど)、
特別な糸の名称(三眠蚕、松岡姫、世紀21、 あけぼの糸、新小石丸など)、
生地の量目などが表示してあるのでそれを参考にしています。

現在白生地の三大産地は丹後、長浜、五泉市です。丹後、長浜では縮緬、五泉ではおもに絽の白生地が織られています。

先染めと後染め

着物には先染めのものと、後染めのものが有ります。
先染めは、糸を染めてから織るもので、いわゆる織りの着物です。
後染めは、加賀友禅のように白生地に染加工をするものです。
織りのものは「硬もの(かたもの)」、染めのものは「柔らかもの」とも呼ばれます。
織りの着物は、染め、絣などによる意匠(デザイン)を楽しむ着物であると同時に、
糸質、加工、織り方による着心地、風合いを楽しむ着物でもあります。

当店では意匠ばかりに捕らわれることなく、それぞれが持つ着心地や特徴をしっかりお伝えできる品揃えを心がけています。
織りの着物には適正な地入れや、何度か着込む事によって本来の着心地、風合いが出てくるものが多くあります。

もっと単衣を

気候の温暖化や、着るものを体感温度で選ぶ現代、単衣の需要はますます強まるのではないでしょうか。
礼装やお茶会など衣更えを守ったほうが良い場というのは当然ありますが、
普段着、しゃれ着などはもっと合理的に、心地良く着ることを考えても良いのではないでしょうか。
南北に長いこの国で、着物にまで中央集権的な発想を昔のまま持ち込んで、
単衣、薄物の時期を厳しく限定するのはいかがかと思います。

北陸に住む店主でさえ、袷より単衣(薄物も含む)を着ている時期のほうが長く、
手持ちの着物の多くは単衣です。
男なので、大部分が織りの着物だからというのもありますが、
礼装以外はほとんどが単衣で、袷も単衣で着込んだあと仕立て直したものが多いです。
昔の通を気取って、単衣で着込んで紬や御召の糊けを充分落としてから袷にするなんて意識ではないんですが、
単衣で着込んでいる間に、半衿や角帯との色合わせから袷の胴裏の色のヒントが得られたりして都合が良かったりもします。
袷に比べれば着付け、メンテナンスも楽で、八掛、胴裏もいらず、仕立代も安くすみます。